2011年12月05日

真剣な顔つき

モンクレール ジャケットは銀座ですることになった。三越や松屋といった有名デパートをはしごし、有名ブランドの専門店を覗《のぞ》いた。
 旅行のための買い物をするという話だったが、雪穂は特に何も買う気はないように誠には見えた。それでそのことを指摘すると、彼女は肩をすくめ、舌を出した。
「本当は、ゆっくりデートがしたかったの。だって、今日はお互いにとって、独身最後の日なんだもの。いいでしょ?」
 誠は小さく吐息をついた。よくない、とはいえなかった。
 楽しそうにウィンドウショッピングをする雪穂の姿を眺めながら、誠はこの四年間のことを思い出していた。そして彼女に対する自分の気持ちを、改めて見つめ直していた。
 たしかに、好きだから今日まで交際を続けてきた。しかし、結婚を決意することになった直接の理由は何だろうか。彼女への愛情の深さだろうか。
 残念ながらそうではないかもしれない、と誠は思った。モンクレール マヤのことを真剣に考え始めたのは二年ほど前だが、ちょうどその頃、一つの事件があったのだ。
 ある朝、雪穂に呼び出されて、都内にある小さなビジネスホテルに行った。なぜ彼女がそんなところに泊まっていたのかは、後で知ることになる。
 雪穂は、それまでに誠が見たことのないような真剣な顔つきで彼を待っていた。
「これを見てほしいの」といって彼女はテーブルの上を指した。そこには煙草の半分くらいの長さの、透明な筒が立てて置かれていた。中に少量の液体が入っている。「触らないで、上から覗いて」と彼女はいい添えた。
 誠がいわれたように覗くと、筒の底に小さな赤い二重丸が見えた。そのモンクレール GENEVRIERをいうと、雪穂は黙って一枚の紙を差し出した。
 それは妊娠判定器具の取扱説明書だった。それによると、二重丸が見えることは、陽性であることを意味する。
「朝起きて最初の尿で検査しろってことだったの。あたし、結果をあなたに見て欲しかったから、ここに泊まったの」雪穂はいった。その口ぶりから、彼女自身は妊娠を確信していたのだと窺えた。
 誠が余程暗い顔をしていたのだろう、雪穂は明るい口調でいった。「安心して。産むなんていわないから。一人で病院にだって行けるから」



Posted by saiko123 at 17:15│Comments(1)
この記事へのコメント
こうしんをたのしみにしています。
Posted by モンクレール at 2012年01月09日 23:54
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